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『人のセックスを笑うな』

人のセックスを笑うな
人のセックスを笑うな
山崎 ナオコーラ著

最近読んだ中では一番好きな文体である。
言葉が優しくて厳しくて。生きていると、ある瞬間にふとある表現=言葉が浮かび、しばらく足が動けなくなる時がある。失恋した時に見上げた空は破り捨てたくなるほどに「憎らしく青」だったり、好きな人と離れがたくて泣きそうにになった時に目に入ったのは見事に食い尽くされた「穴あき葉っぱ」だったり。
留めておかないと移ろってすぐに自分でもわからなくなるそんなような感情を、この作品は宝石箱をひっくりかえしたように沢山見せてくれる。

小鳥の群れが飛ぶ光景を「生暖かいものが、宙に浮かぶことが不思議」といい、恋人からもらったマフラーにささくれだった唇がひっかかる事さえいとおしいと思い、会えなくなった今でも「今度は手編みの」マフラーを持って現われる彼女を恋焦がれ、
唇もマフラーも指先も乾いているが、空気の渇きを感じることが出来るオレは、本当は湿った生き物だ。腹の中にはたんまり水がある。心だって重く湿って、温かいんだ。「人間ってすばらしいな」と、ばかみたいなことを考えながら、バスを待っている。

と物語りは始まっていく・・・。

本作品は原稿用紙にして102枚という短さながらも堂々第41回文藝賞受賞作であり、第132回芥川賞候補にもなったものであるが、その暖簾とは無関係に一個の小説として読んで価値があるものと思える。
文藝賞受賞時に氏がこう言っている。
(前略)私は映像イメージが沸くようなものや、ストーリーにうっとりするようなものは書かない。言語表現として面白いもの、ぎりぎりのもの、甘くて硬いものを書きたい。
(中略)みなさんが嘗めて、「甘い」「硬い」「で、結局何が言いたいの?」と思ってくれたら、嬉しい。

実際、短いけれども何度も嘗めて味わいたくなるようなそんな小説である。

作品を手に取るにしてはこのタイトルにしろペンネームにしろ多少二の足を踏んでしまうようなものだが、読み始めてしまえば「意図してつけた」作者には悪いがもっと早く読んだら良かったと思わせる魅力がある。

設定は、美術専門学校へ通うオレと、その学校の教師の短い恋愛。(恋愛としかカテゴリーが見つからないのがもどかしい。恋愛と二文字に押し込めることでなんだか違うものに変質してしまう気がする。季節でもないし、生活でもないし、交流ではないし。)
オレからみたら恋愛だったけれども、ユリからみたらなんだったのか本当のところはわからない。そういう残酷さも妙にリアルな感触である。
20歳年上の既婚の彼女は別に何が特別優っているというわけでもないし、歳相応の容姿にちゃらんぽらんな人生観を持っている。年上の女の綺麗じゃない所を見ても惚れた弱みなのかそういう嗜好なのか、オレはますますユリにのめりこんでいく。彼女の旦那がこの話の中の登場人物では一番まともなデキタ人。デキタ旦那が二人の間に?入ってきてもオレは恋愛が続く事をぼんやり思い続けていたが・・・。

読む人によっては歳の差が激しいことに無理を感じたり、事の必然性の持って行きかたに不満を感じたりするかもしれないが、
どうだろう。現実として私たちは偶然の出会いに整合性や正当性を当てはめて選択できるものだろうか。
いつの間にか好きになっていた、いつの間にか世界が変化していた、いつの間にか自分が自分の世界からはずれていた、そういうものではないだろうか。

最後のオレの言葉が苦く甘く舌の上で溶ける。
「会えなければ終わるなんて、そんなものじゃないだろう。」




東山区 蓮如 | | 18:47 | comments(2) | trackbacks(1) |

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Comment
わざわざありがとうございます。
黒ラブって憧れます^^
散歩中の黒ラブとか見るとしばらく方向転換してまであとをつけちゃいます。
また遊びにいかさせていただきます。

posted by 蓮如 ,2005/02/08 4:56 PM

蓮如さん、はじめまして。
たまたま検索の結果記事をお見かけしまして、TBさせていただきました。

うちの方は基本的に愛犬の親バカサイトの日記にブログを利用しているという感じです。しかし最近は趣味の読書や音楽、映画の話題が多くなってきてしまいました。
こちらは過去ログも充実してらっしゃるようなので、色々勉強させていただきますね。

では、ご挨拶まで。

posted by かえる ,2005/02/05 9:11 PM










Trackback
URL:
「人のセックスを笑うな」 山崎ナオコーラこの小説の評に、"タイトルと内容が関係ない"という指摘を見かけることもあるが、そんなことはないでしょ。このタイトルはこの小説のほとんどすべてを表現している。39歳...
かえるリポート,2005/02/05 5:59 PM

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